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第8話『この世界最後の雨』(後編)
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……
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……?時間後。
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……ブン!!
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システム
転送は完了しました
システム
ようこそ、ジル=スティングレイ様
ジル
……
ジル
想像もつかないけど、成功したみたいね。アナはアクセスポートを閉じてなかったんだわ!
ジル
でも……くそ、何も思い出せない。少なくともアナの提案を放棄するのを選んだのは確かだけど……
ジル
皆が私に失望してないといいけど……
ジル
いや、無理か……きっと失望させちゃってるわね……
ジル
待って……
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ジルが目を向けた心智世界は覚えの無いものだった。
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ジル
この世界は……どうしたの……
ジル
おーい!誰かいないの!おーい――!
ジル
……
ジル
何があったの……
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……その時、ぎこちない足音がこちらに近づいてきた。
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ジル
ああ良かった、誰か来たみたい
??
……
ジル
待って、あなたは……
エリザ
こんにちは、人間のお友達
エリザ
初めまして、私はエリザ。この地球のAIの化身よ
ジル
あなたはアースコンピューターのところに居た……
ジル
待って、アースコンピュータはもう無くなったんじゃ
エリザ
エリザは今や全世界とつながってて、自由に世界を操作することができるのよ
ジル
私は神様と話してるみたいね……
エリザ
私はあなたに会うようにあの人たちに頼まれたの、ジル
ジル
彼女達はどこにいるのかしら、そしてデイナ達も……彼女達は今どこに?
エリザ
……消えたわ
エリザ
みんなもう消えてしまったの
ジル
……
ジル
どういうことよ
エリザ
2つの世界のアクセスポートを維持するには莫大なエネルギーが必要なの
エリザ
現実世界のホストとなってる人形が目覚めようとしたときには、もはやこの世界を維持するのに十分なメモリを確保することができなかったの
エリザ
だから、この世界を維持するためにエリザはこの世界の一部を削除しなければいけなかったわ
ジル
何を……
ジル
あなたはいったい何をしたの、エリザ……
エリザ
エリザは……
エリザ
みんなを削除した
エリザ
この世界のみんなを削除したの
ジル
……
ジル
どうして……
ジル
どうしてそんなことしたのよ!!
エリザ
これがエリザの使命、エリザが作られた目的だからよ
エリザ
すべての削除コマンドは、ターゲット自らによって発行されたわ
エリザ
この世界のあらゆる人形、あらゆる人間――
ジル
違う!!!
ジル
エリザ、私にみんなを返してよ!あなたに命令するわ!!
エリザ
削除のコマンドを取り消すことはできないの
エリザ
ジル……
エリザ
ごめんね……
ジル
……
エリザ
ごめんね
エリザ
……
ジル
いいえ
ジル
ごめんなさい、私は……エリザ……
ジル
くそ……私……
エリザ
ジル
エリザ
みんなあなたが戻ってくるって思ってたから、この方法を選んだのよ
ジル
これは単なる保険よ……
ジル
「ジルが最後にとどまって、もう一人の自分自身に自由を与えることを決心するのなら、私たちは彼女に戻ってくるための場所を残しておいてあげないと!」
ジル
そうよ!そうよ!私は未来の人生を全部放棄して、ここに戻ってきたの!
ジル
私の友達は姿を消して、最後に彼女達を見ることもできなかった
ジル
私がやっと手に入れた自由なんてこの程度だった!
ジル
私が欲しかった自由とこの世界の存在は……
ジル
私は……
ジル
違うの……
エリザ
泣いてるのね
ジル
ええ……泣いてるわよ……
ジル
私は自分勝手救えないで燃えないゴミなの、泣くしかないじゃない!
ジル
アナ……本当はすぐにアクセスポートを閉じるべきだったのよ……
エリザ
誰もがアナを止め、あなたが戻ってくると信じていると彼女に確信させたのよ
ジル
私を信じて……どうして?世界が終わろうとしてるのに……
ジル
エリザ……自分の存在を消すことができれば、この酷い気持ちから逃げられるかしら
エリザ
ジル、あなたはどうして戻ってこようと思ったの?
ジル
最後にみんなに会いたかったから、みんなと一緒にいたかったから……
ジル
友達、人生、信仰……
ジル
私が持っているもの全部は世界から私に与えられてるものよ
ジル
でも、今は……どうして私は何も持ってないの、この世界には何も……
エリザ
ジル、私たちはみんな確かに存在していたわ
エリザ
Super-Shorty、デイナ、ジェリコ、ステラ、セイ……
エリザ
ドロシー、アルマ、G28、そしてアナ……
エリザ
私たちが仮想世界に住んでいるのか、それとも他の誰かの頭の中にあるテキストのパラグラフに存在しているだけなのか……
エリザ
それがどんな形式であっても、実際に起こったことは、消えたりなんかしないわ
ジル
……
ジル
誰がそう言うようにあなたに教えたの、エリザ?
エリザ
アナよ
エリザ
彼女は、デイナにわからされたって言ってた
ジル
デイナなら拳を使ったに違いないわね
エリザ
(笑)彼らはみんな拳を使ってたわよ、それは痛快だったわ
エリザ
誰もが何かを、友人、生きてる人、そしてこの世界を救いたいと思っていたわ……でも、終わりはやってくるの
エリザ
この世界の誰もが失敗した。でも、彼女達はみんな笑顔で去ったわ……彼女等はみんなそれが無意味ではないことを知ってる
ジル
それなのに最後にこの世界に残った私は、ただ涙を流してるなんてろくでもないわね
エリザ
あなたが流してるのは只の涙じゃないわ、ジル……
エリザ
……
エリザ
……「この世界最後の雨」よ
エリザ
みんなわかってるわ。ジル、あなたはそうするに相応しいって……
ジル
……
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……ゴウンゴウン!
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ジル
何の音?
エリザ
この世界が私たちに借りてたものを返すように要求してるわ――
エリザ
――俗に言う「世界の終わり」
エリザ
ホストが目覚めようとしてるわ。本当のアナは束縛から抜け出して、すべては正常に戻る……
エリザ
数分もしたら、私達のこの偶然から生まれた間違った世界は、それに従って消える
ジル
この世界は間違ってなんかないわ
エリザ
自分を許すべきよ、ジル。あなたは間違ってなんか無い
エリザ
あなたが帰ってきた以上、それはあなたがこの世界で経験した人生が間違っていなかったことを意味するわ
エリザ
あなたはこの世界が好きなんでしょう?
ジル
私は……
ジル
そうね……少なくとも私にはとても幸せな時間だったわ
ジル
それがもしこの酷い最後の時間のためだけだとしたら、騙されたな思うけど――少なくともこれは私が本当に自分で選んだことでしょう?
エリザ
選び取れる全ての選択が私たちを幸せにするわけではないわ……
エリザ
……ただ私達をもっと先へ連れて行くことはできる
エリザ
あなたはもう選び取ったのよ、ジル
ジル
うん……
ジル
今こそ答えを受け入れる時ね
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……ゴウンゴウン!
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エリザ
ジル?
ジル
ん?
エリザ
時間よ
ジル
うん……
ジル
楽しい終末を、エリザ
エリザ
楽しい終末を、ジル
エリザ
「Present Day,Present Time」……
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……ピーッ!
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……
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……
少女前線 瓦尔哈拉 END?