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第6話『スピーチ恐怖症』（後編）
G28
Present Day,Present Time！
G28
こんばんは、ええと……――
ドロシー
やっと到着ね！ドロシーちゃん再びVALHALLAに参上！
ドロシー
あれ、あなたはさっきの……
G28
あはは、こんなすぐにまた会えるなんて、ドロシー首相！
G28
そうなんです、私ここでパートタイムのバーテンダーも兼任してて、3時間で二回もあなたに会えて、光栄です――
G28
えっと……こちらにいるのは……
ステラ
ステラ=星井だ、先ほどは騒ぎを起こしてしまって申し訳ない
G28
大丈夫、今はもっと大きな騒ぎと代わってますから
ステラ
セイ、お前が言ったようにここには刺激的な身なりのバーテンダーはいないようだが……
セイ
私が来た最後に来たときは、ジルっていうマスターがお酒を造ってたんだけど……
セイ
あの人のスタイルは……うんと……そこの人形さんとは全然違うし
G28
あはは、ボスがそれ聞いたら不機嫌になりますよ、あなた達の言うとおりです
G28
私はG28です、ただこのバーではわたしのこと皆ギリアン（Gillian）って呼ぶんです、私も最初に誰が読んだのは覚えてないんですけど、でもバーテンダーの時の私はこの名前を使うよう区別してるんです
セイ
……なんだが犬の名前みたいね
ドロシー
でも、グリフィンシティ全体が混乱してるっていうのに、あなた達お店は開けてるのね？
G28
ボスは前に「世界の終わりの日に、このバーが唯一必要な場所になれば」って言ってました
G28
何かご注文は？
ドロシー
それじゃあいつもの、私はピアノウーマンで！
G28
私にとっては、初めての注文ですね
ドロシー
そうね、いつもボスが作ってくれたの
ドロシー
さぁあなたの初めてを私にちょうだい、ハニー！
ステラ
ボス……ジルと呼ばれていた女の子か？
G28
「ジル」？――はい。でも「女の子」？――あの人もう27歳ですけど
G28
ドロシー首相、ピアノウーマンです――
ドロシー
ありがとう！
ドロシー
……ん……味が違うような？
G28
え？レシピどおりに作ったんですけど、まさかボスの秘密のやり方でもあるのかな？
ステラ
それで、ジルというのは今どこにいるんだ？
G28
えっと…… ボスは……
G28
彼女は……家に避難してます、だって街は今とっても危険ですし……でしょ？
——————
……ドロシーはカクテルを飲み干すと、ステラのところへ近寄った。
——————
ドロシー
彼女は嘘をついてる――私の女とリリムとしての直感がそう言ってるわ
ステラ
……G28
ステラ
ジルはまだこのバーにいる、そうだろう？
G28
そ……
G28
そんなことありませんよ！彼女はもうとっくに帰って――
ステラ
G28、私の目を見ろ
G28
え？
——————
……ブン！
——————
ステラ
ジルは裏口か
G28
えっ……
G28
あなた……私に侵入したの？
G28
か……体が動かない！
ステラ
すまんな、ミス・ギリアン、5分そのままでいてくれ、行ってくる――
セイ
裏口から物音がするわ、慎重にいきましょう、まず近寄って聞いてみましょう
——————
3人は、裏口の近くに顔を寄せた。
——————
……
——————
ジル
ついに……
セイ
これはジルの声ね……
G28
うぅ……もうおしまいね……
ジル
私のカードの予言が示したとおり……
ジル
あの幽霊のおかげで私はすっかり変わっちゃった
ステラ
何……？
ジル
幽霊……あの黒髪の少女は私に言った……
ジル
「すべてはここから始まり、すべてはここで終焉を迎える」
ドロシー
ちょっと！ステラ、あなたの胸で顔が押されてるんだけど！
ステラ
何？そんなことないだろう！
セイ
二人とも、騒がないで！
ジル
わかったわ！
ジル
「霊を通じた科学的実践」はまさに革命的ブレークスルーになるのね！私の思った通り！
ジル
すぐに、私のオカルトの不思議が全世界に広まる事になるわ！
——————
……ギィィィ！
——————
ドロシー&ステラ&セイ
わぁぁぁ――！
——————
……裏口が突然開き、錆びついた蝶番の音と共に、3人は地上に身を投げ出された。
——————
ジル
誰――
ジル
待って……
ジル
セイ？ステラさんに……ドロシー首相？
ドロシー
こんばんは、ジル
セイ
こんばんは、ジルさん、また会ったわね
ジル
どういう組み合わせなのこれ？
ジル
しかもあなた達二人がチーム組んでも、殴り合いでも始めそうな理由が十分ありそうだけど
ステラ
説明したいところだが、今はそんなことはどうでもいい、むしろあなたが何をやっているか説明してもらおう
ジル
私は……
G28
か…彼女は、彼女のオカルト論の研究してて……
G28
いわゆる……よくわからない趣味みたいなんですけど……
ジル
これは科学よ！人造生命体にはわからないでしょうけどね！
ドロシー
ああ……生きた人間を模した一人のDFC-72かつ世界最後の首相は、この言葉を聞いてとっても悲しくなったわ
ドロシー
まさか、私たちが世界を救うために最後の希望を探そうと尽力してるのに、その結果がただ27歳でツインテールの人間のお友達が、中二病的な活動真っ最中のところに出くわすだけだなんて
ジル
ええと……中二…なに？
ジル
違うの！本当よ、みんな、私はずっと幽霊と話せたの！今日彼女が現れそうだったから、彼女の本体を呼び出そうとしただけよ！
セイ
ごめんなさい、ジルさん、いま外の世界はむちゃくちゃなの
セイ
街には人形と原住民と機甲兵が溢れてるわ。時を同じくして一人のホワイトナイトの脱走兵と、一人の鉄血のボスと、一人のグリフィンシティの首相が世界を救うために手を組んだってわけ
セイ
あなたの子供みたいな夢がこの星に起こってることと関係してるわけじゃない……とは思う
ドロシー
あなたの秘密が一つわかって嬉しいわ、あなたの面白いオカルト研究に幸あれ、ハニー
ステラ
ちょっと待て
ステラ
この事が何の接点も持っていないとは思わん、みんな、私にもう一度問わせてほしい
ステラ
ジル、その幽霊はどんな様子だった？
ジル
ええと……彼女は黒のショートヘアで、ティーンエイジャーみたいだったわよ
ジル
黒いローブを着てて、西洋人形のみたいな硬い表情で
ステラ
彼女の名前は何と？
ジル
アナって呼んでって言っていたわ
ジル
アナ＝グレアムよ
ドロシー
アナ！まさか、本当にアナなの！
ステラ
ジルは、また彼女と会うことは出来るか？その幽霊と？
ジル
わ……私は彼女に説明してもらおうと思ったの、私をどうしたいのかを
ジル
それから彼女が消えちゃったから……彼女を呼ぼうとしたの、そっちの方が早いかもって
ジル
それでアナはどうしたのかしら？
ジル
あの子は「あなたが真実を知りたいなら、私を信じて」と言ってたわ、あの子は悪人じゃないわよ！
ドロシー
ええと……みんな……
ステラ
ジル、あなたは27歳だろう、こんな生き方をしてて自分で危機感というのは覚えないのか？
ジル
成長は呪いじゃないわ、一種の成熟よ。27歳だからこそ、自分がヤバイだなんて心配してないわ
ジル
あるいは……今のこの街の方がもっと危険って思ってるんじゃない？
ドロシー
ちょっとみんな！わ……私なんか浮いてない？
セイ
浮いてる？
セイ
嘘！そんな！ドロシー、あなたの体ちょっとずつ浮いてるわよ！
ドロシー
えぇぇぇぇぇ！わ、私まさか飛んでるの！！
ジル
これはどういうこと！まさかオカルトを実践した人の証人になれるなんて！
ステラ
違う！これは浮遊薬だ！
ステラ
セイ、すぐに彼女を捕まえてくれ、でないとドロシーが飛んでいってしまう！
セイ
確保よ！確保！
ステラ
あの酒…… G28か！
——————
……ステラが振り向こうとしたその時――
——————
……バン！
——————
……突然、彼女は捕まれ地面に倒された。
——————
セイ
ステラ――！
ステラ
何だいったい！
ステラ
くそ、G28、お前か！
G28
ごめんなさい、皆さん
G28
ホワイトナイトさん、手を離さない方がいいですよ、でないとドロシー首相が天国まで飛んでっちゃう！
G28
そしてあなたよ、ステラさん、今度は私の目を見れると思わないで！
ステラ
ぐぁぁ！ これは「ウォールオブジェリコ」！
G28
あなたが教えてくれたやつよ！――ボス、今のうちです、早く逃げて！
ジル
えっ？
G28
彼女達がアナを見つける前に！早く逃げてください！
ジル
ええっと……
ジル
わかったわ！わ……私行くわね！
G28
アナのところへ行ってください！
——————
……ジルはしばらく呆けていた。
——————
ジル
アナの…ところ
G28
早く行って、ボス！
G28
アナは言ってました、きっとあなたなら見つけられるって！
ドロシー
わぁぁぁ―――！
セイ
動かないで、飛んでっちゃうわよ！
G28
行って、ジル、早く！
ステラ
くそ！セイ、お前の銃を！
——————
……ガシャ！セイが片手で拳銃を構えた。
——————
セイ
ごめんなさい、ジル！動かないで！
ジル
あ、あなたは何してるの！お願い撃たないで！
G28
ちょっと、ボスを脅すつもりね！
G28
きゃあ――！
——————
……ステラはG28が手を緩めた瞬間、逆に彼女を地面に倒した。
——————
ステラ
どうか大人しくしていてくれよ、このお馬鹿人形め！
ステラ
セイ、ドロシーは私に任せろ！ジルをどうにかしてくれ！
ドロシー
ああああああ！ ……ちょっとちょっと！
ドロシー
――よかった、なんとかセーフ！
セイ
ジル、協力して！
ジル
こ、こっち来ないで、セイ！
セイ
傷つけるつもりはないわ、ただ質問をしたいだけなの、いいでしょ？
——————
……セイは銃を収めた。
——————
セイ
怖がらないで、手をこっちに
ドロシー
セイ、あなたはワルキューレ隊の方がもっと向いてるでしょうね
ジル
私は……
G28
ボス……
セイ
ゆっくり、大丈夫だから……
ジル
セイ、それにみんな……
ジル
私――
セイ
な――！
——————
……セイは手を伸ばし、ジルの手を掴もうとした。
——————
……すると、彼女の手は空を切った。
——————
ドロシー
嘘……
セイ
ジル？ジル、どこへ行ったの！
ステラ
彼女が……消えた？
セイ
たぶん……
セイ
彼女……突然姿を消したわ
ドロシー
ちょっと、おっぱいバーテンダーさん！
ドロシー
何か私達に言わなきゃいけないことがあるんじゃないの？
G28
う……
ステラ
言ってもらう必要はないぞ、お前のメンタルモデルが綺麗さっぱりになるまで調べてやろう
G28
や、やめてぇ！話すから！
G28
でも、あなた達は受け入れないと思うわ……この真実を……
セイ
ギリアン、例えジルが何であろうとも、彼女を見る目は変わらないわ
G28
いえ……私がお話しするのはボスの事だけではなく、アナの事だけでもないんです……
G28
お話しします……この世界の真実を
