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第3話『先駆者』(前編)
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……同時刻、グリフィンシティ本部前。
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……現場には多くの抗議するグリフィンの人形と人間が溢れていた。
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MP5
う~……人が多すぎます
MP-446
だからここには来たくなかったのに、めんどくさいなぁ!
MP5
でも、行くべき場所もないですし、お店やバーは閉まってます、私達にできるのは――きゃあ!
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……MP5は突然飛び出してきた人間にぶつかって倒れた。
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ステラ
ああ……すまない
MP-446
MP5、大丈夫!?
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……人間の女性はMP5をまじまじと見ると、彼女を助け起こして、歩き去っていった。
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MP-446
変な原住民の人だったね
MP5
でも……見たことがあるような
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……その女性は群衆の中を歩き続けた。
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ステラ
傘ウイルスの移植には成功……モジュールは問題なく動作しているようだな
WA2000
報告よステラ、こちらクリムゾンローズ(Crimson Rose)、配置に着いたわ
ステラ
わかった、観測を続けてくれ、何かあればいつでも報告しろ
ステラ
こんなに人が多いのは首相が就任した日以来だな、その日は確かメガクリスマスだった
WA2000
そうね。でも、現場のセキュリティは物凄く薄いわよ、抜け穴だらけ
ステラ
ホワイトナイトは現れなかった、アーキテクトとセイ……彼女達がジェリコをおびき寄せることに成功したらしい
ステラ
そして首相は、人形が思いがけないことをするわけはないと信じている、それは事実だろう、これを除けばな――
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……ステラは電子義眼である自身の右目に触れた。
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ステラ
彼女達は今は私のものだ
WA2000
溜息が聞こえたわよ、少し緊張してるんじゃない?
ステラ
うん?よくこんな騒々しい場所で聞こえたな?
WA2000
私を買うのにいくらかかったと思ってるの?ちゃんとスコアは出してあげるって言ったでしょう?
ステラ
実のところ緊張はしている、次に何が起こるかまではわからないからな……
ステラ
ようやくこの時が来たんだ、親友まで利用した以上、絶対に失敗は出来ん
ステラ
万一のことがあるから改めて聞いておきたいのだが、もしお前が民間人を撃つよう命じられたら、本当に矛盾を起こしたりしないか?
WA2000
そうね、もう一度言ってあげる
WA2000
私は単なる商品よ、あなたは私を買ったの、私は無条件にあなたの命令に従うわ――今試してみる?
ステラ
いや構わん、計画を乱すわけにはいかないからな、あらゆる事態を避けようとしただけだ
ステラ
すまない、お前を信じよう
WA2000
本当に緊張しすぎよ。人混みの中に長いこといるからよ、呼吸を整えて
ステラ
そうだな、ここにいる人形は香水をつけている人形も少なくない、どのブランドだか分からんが、いずれにせよディーゼルと混ざることになるだろう
ステラ
私のことはいい、演説台を見ろ。首相が出てくるぞ
WA2000
本当に?テレビじゃ出てくるのは不可能だって言っていたわ
ステラ
お前はその政治家か、それとも私か、どちらを信じる?
WA2000
(笑)人形の政治家よりいつだって人間の方が優れてるわ
ステラ
政治家は政治家だ、同じことはセイファーの従業員にも言えるが
ステラ
もう一度言うが、私の自信は右目の鉄血のモジュールから来ている。傘ウイルスを解放し、現場の全てのグリフィンの人形に侵入することができる
ステラ
この通りやその本部ビルにいようと関係なく、いかなる人形でも私の目と耳となる
WA2000
本当に凄いのね、誰があなたの鉄血に取られた右目が世界をコントロールする道具になってるなんて思うのかしら?
ステラ
私はグリフィンシティを救いたいのだ、なんとしても勝たねばならん
WA2000
その宣誓供述書をFatebookに送ったら、事が済んだ後にたくさん賞賛が付くんでしょうね
ステラ
好きにしていいが、角度に気をつけてくれ
ステラ
上から写真を取られると……胸が少し大きく写るのでな
WA2000
最後に一番賞賛してもらったのは――
WA2000
待って……彼女が来たわ、私たちの首相のお出ましよ
WA2000
ステラ、あなたの勝ちみたいね
ステラ
いや、まだだ
ステラ
…………
ドロシー
レディースアンド原住民!こんばんは!
ドロシー
私がグリフィンシティみんなの愛され首相!
ドロシー
私の名前はドロシー、可愛さで敵なし!ドロシー=ヘイズ(Dorothy Haze)ちゃんです!はじめまして!
ステラ
……私の口から勝利宣言をしてこそ、勝利したことになる
ドロシー
グリフィン市民のすべての人間、すべての人形、そしてすべてのボルトと、生物細胞の皆さんへ!
ドロシー
私はずっと皆がこの地球規模の気候問題に対して関心を持ってることはわかってるわ、皆の気持ちもよくわかってるつもりだよ
ドロシー
だから今日は開誠佈公の精神に則って、ネットワークプラットフォームで公開放送する形式で、主に世界的な砂の雨に関する重大な問題について市民みんなの質問を聞いていくよ
ドロシー
いつも全市民の気持ちを大事にして、みんなの問題を解決するために頑張ってるって事を信じて欲しいな!
G28
はい、ドロシー首相! (挙手)
人間のSP
待て、来るんじゃない!
G28
私は質問をしたいんです!ドロシー首相こっちです!
ドロシー
えっと……私あなたと前に会ったことがあるよね?
G28
私は、G28です。何度か取材させてもらいました。たくさんアルバイトをしてきましたけど、今は「オーグメンテッドアイ」のインターン記者です!
ドロシー
それじゃあなたに決めたわ、ハニー!
ドロシー
さあ、こっちへ!何でも聞いちゃって!
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……G28はドロシーの前まで来ると握手を交わした。
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G28
ありがとうございます。ドロシー首相!
G28
と言っても……皆さんの意見を伝えたいだけなんです
G28
国民の反応によれば、過去3年間で、誰もが砂の雨問題が解決したと思ってはいません
ドロシー
あはは……この地球規模の気候問題は解決に向かってるよ……ただちょっとだけ時間がかかるだけで
K
それは結構だ、だが俺達はお前らが行動を起こしているのを見たことすらないぞ!
G28
申し訳ありません、Kさんは私たちの雑誌のペットと子育てコーナー担当なんです。ですから、イライラ気味で
人間のSP
口にはお気を付けを、原住民の方!
K
なんだと、お前も原住民だろうが!
ドロシー
あはは、大丈夫だよ、原住民のみんなが私に何を求めてるのかは理解してます
ドロシー
ご存知の通り、私は私のSPとして数人の原住民の人を雇ったの
ドロシー
私は心理的にも肉体的にも人間を信頼してるし理解してる……
WA2000
あの人は何について話してるの……
ドロシー
「文明」っていう……原住民の心理的な構造も同じようにね。――私の言う事が差別的に聞こえないといいんだけど、生活環境に対するあなた達の要求がどんどんシビアになってくのも自然なことだと思う
K
ごまかすんじゃない、俺達が必要としてるのはもっと直接的な説明だ!
ドロシー
ふふん、それについては私たちが舞台裏でずっと静かに取り組んでるわ、何かに取り組むたびに皆に全部公開することないでしょ?
G28
ですが……首相。市民は3年前にあなたを首相に選びました
G28
そのような声明が皆を満足させることができるとお思いでしょうか?
K
誰がドロシーを選んだのかなんて俺にはどうでもいい
K
身元不明のリリムがどうして首相をやってる!しかも、お前ら彼女の私生活がどんなのかはわかってるだろう!
ドロシー
ああもう!
ドロシー
砂の雨が降ってきてから、私はずっと解決するために最善を尽くしてるのに、そんなこと言われたら私も我慢出来ないよ!
ドロシー
最後にこんな結果になるなんて思わなかった。どうして私がやってることに皆満足してくれないの!SPさん、この人を下がらせて頭を冷やしてあげて!
人間のSP
原住民記者殿、申し訳ありませんが、こちらへどうぞ
K
くそっ!みんな、これが望んだ結果か?
K
この街はもうすぐおしまいだ、どうするつもりだお前ら!
人間のSP
早く、邪魔しないでくださ――
人間のSP
――ぎゃああああ!
K
何だ?!
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……人形記者のG28が突然、警備員の手首を掴んで倒したかと思うと、その後レスリングの技で彼を地面に組み伏せた。
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K
G28?お前――
K
どうして「ウォールオブジェリコ」をキめてるんだ?!
G28
ええ?!どうして私、警備員さんに突然こんなことを?!わ……私そんなつもりじゃ!
ドロシー
G28、あなたは会場の秩序を乱したわ、許可なくして原住民法で保護されてるレスリングの技を使うなんて、これは重大な侵害よ!
ドロシー
ハニー、あなたの変態的なプレイを今すぐやめて!
G28
で、でも動けないんです!私は無実ですし、私の職場環境でレスリングの技なんて覚えるのは無理ですって!
ステラ
彼女を責めないでくれ、全て私の命令だ
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……一人の女性が群衆から演説台に歩み出た。
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ドロシー
あ……あなたは……
K
ステラ?まだ生きていたのか?!
ステラ
皆さん、こんばんは
ステラ
私はステラ=星井(Stella Hoshii)。お会いできて光栄だ
ドロシー
ス……ステラ――!!
ステラ
その通り、わたしはまだ死んでなどいない
ドロシー
あ、あなた達!早く彼女を取り押さえて!
ステラ
今度は逃げおおせると思うな、リリムの小娘が!
ステラ
人形の皆、私がこれから行う失礼を先に厳粛にお詫びしておこう
MP5
どうしたの?私の体が――!
MP-446
傘ウイルス、傘ウイルスだよ!私たち侵入されてる!
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……現場の人形は次々とステラによってコントロールされ、人間のSPを地面に組み伏せていった。
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ステラ
誤算だったな、ドロシー?傘ウイルスに免疫があるホワイトナイトが2、3人でもいれば、戦うことができたろうに
ステラ
だが、お前は人々の関心を惹くため、原住民のSPばかり雇っていた。彼らでは人形に対抗する力はあるまい
ステラ
みんな、これがこの街が示してきた公平と自由だ!こんな些細で表面的な仕事で心の許しを得ていたのだ!
ドロシー
う……あなた!どういうつもりなの?
ステラ
お前たちの本性を暴きに来たのだ!
ステラ
お前たちはアルマを攫い、アースコンピューターを隠した!
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…………ステラは構わず壇上に上がりドロシーのところまで歩み寄った
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ドロシー
アルマ?アースコンピュータ?彼女がどこにいるかなんて知らないよ!
ステラ
すまんが、お前が知ろうと知るまいと、言ってもらうつもりだ
ドロシー
ホ、ホワイトナイトのみんな!はやく来てなんとかして!
ステラ
クリムゾンローズ、やれ!
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……バン!バン!
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……後方から急行した数体のホワイトナイトは、瞬時に遠方からの弾丸にメインモジュールを撃ち抜かれ、崩れ落ちた。
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ドロシー
え!なにが起きたの?!
WA2000
全滅させたわよ、ステラ、三ッ星勝利ってやつね
ステラ
確かに値打ちどおりだな、グリフィンシティの「死神」なだけはある、先ほどの失礼はお詫びしよう
WA2000
誰がその名前を見ても中二なハンドルネームにしか思えないから、やめてちょうだい
ステラ
ドロシー、抵抗をやめろ、お前の命を奪いに来たわけではない
ドロシー
でもやってることは命を取りに来たのと大して変わってないよ!
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……ドロシー首相は本部ビル内に向かって逃走した!
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WA2000
ステラ、後方からホワイトナイトが大量に来てるわよ、あなたのところにね
ステラ
そうか、私の侵略はすでに完了した
ステラ
お前たち、力を貸してもらうぞ!
WA2000
……こんなにいるグリフィンの人形をコントロールできるの?
ステラ
私は少し命令するだけでいいんだ、16Labのテクノロジーによってモジュールが増幅されているからな
WA2000
これは間違いなくグリフィンシティの歴史上で最も狂った時間になるわね……
WA2000
ステラ、私たちの小さな首相は本部に逃げたわ、これは厳しい戦いになるわよ
ステラ
関係ない、彼女を捕まえて、その後彼女の本当の人格を暴き出す……
ステラ
この街の喜劇には、終わりの日が来る前にけりをつける!